最近読んだ小説2

最後の息子 (文春文庫)

最後の息子 (文春文庫)

ニュートンの林檎〈上〉

ニュートンの林檎〈上〉

ニュートンの林檎〈下〉

ニュートンの林檎〈下〉

東京奇譚集

東京奇譚集

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

LOVE&FREE―世界の路上に落ちていた言葉

LOVE&FREE―世界の路上に落ちていた言葉

WORLD JOURNEY

WORLD JOURNEY

吉田修一は最近はまってる作家の一人。前に『パークライフ』と『パレード』の二つを読んでみたのだが、この二つを読んでからというもの、僕はこの作家さんに完全にはまってしまった。その辺にありそうな日常。ちょっとの狂気。くすっと笑わせてくれるジョーク。アルアルと思わせる絶妙な感情表現。しったかこいて評論してんじゃねえよと言われそうだけど、この人の小説の魅力は、瑞々しくて清々しいところ。読んでて気持ちがいいのだ。夏の暑い日にプールに飛び込んだような気持ちの良さ。とりわけ恋愛における嬉しさ寂しさ嫉妬あたりの心理描写には一種のカタルシスさえ覚える、と言ったらさすがに言いすぎだけど、まあそんくらい読んでてキモチがいいのだ。この『最後の息子』は中篇小説が3つ入っていて、なかでも表題となっている『最後の息子』は、新宿で働くオカマとそのヒモの青年という設定も含めてかなりおもしろいからコレおすすめ。

辻仁成の『ニュートンの林檎』は上下巻と合わせて600ページ近くある上に、個人的には読みづらい文体で、読破するのに割と時間がかかった。しかも読むのに体力使う割には、それほど‥‥って感じかな。それほど‥‥って感じだから読むのに時間がかかったってのもあるけど。でもストーリーの壮大さには凄みを感じた。冒険モノのようなハラハラ感。登場人物も活きてる。だから小説で読むよりも1クールのドラマで見たいと思った。ちょうど辻仁成は映画監督もやってるので、ぜひドラマ化して欲しい。ストーリーがドラマチックな展開なので毎週ビックリさせてくれる良いドラマになると思う。水曜夜10時の日テレあたりにぴったりの話だし。

村上春樹の待望の新作『東京奇譚集』に関しては想定の範囲内というか、ちょっとがっかりというか、もの足りないというか、まあそんな感じ。期待を上回ってはくれなかった。あまりにも好きな作家だから、相当期待しすぎちゃってるのがいけないんだと思う。他の小説と相対的に比べればこの『東京奇譚集』は結構いい線いく名作なんだろうけど、村上春樹の新作待ってました!いやっほう!って期待フィルター通して読んじゃったもんだから、読後感は、お腹がいっぱいにならない上に消化不良ぎみって感じのなんだか残念な気分。小さいころ毎週楽しみにしていた土曜日の家族の外食で、行った店がハズレだったときのあの残念な感覚に似てるかも。

リリー・フランキーの『東京タワー』は、控え目に言っても、今年度ナンバーワンだ。号泣した。心の中で泣いたとかそういうことではなく、実際に涙を流して喉がヒクヒクするほど号泣した。小説を読んで泣いたのは生まれて初めてだ。今年度ナンバーワンと言ったが、今まで読んできた本でも5指に入るかもしれない。号泣するほど良かったのに、5指に入る「かもしれない」と言葉をにごし、はっきりと「コレは5本の指に入る名作だ」と言いきれないのには、これまで読んできた小説の中で人生のバイブルとさえ言える小説たちと比べるとちょっと劣るかなって、冷静に考えれば思えてしまうから。例えば沢木耕太郎の『深夜特急』。例えば阿佐田哲也の『麻雀放浪記』。例えば村上春樹の『風の歌を聴け』。例えば村上龍の『村上龍映画小説集』。これらはもはや僕にとって一種の宗教であり、思想であり、そしてバイブル(聖書)なのだ。この4人の作家は僕にとってもはや教祖であり、僕はいわゆる信者なのだ。しかし同時にこうも思う。このリリーさんの『東京タワー』という本を高校や大学の時期に読んでいたらな、と。上記の4人の作家に惚れ込んで片っ端から読み漁っていた高校〜大学というもっとも多感で影響されやすい時期に、この『東京タワー』という本に出会っていたとしたら、先ほど上げた作家たちと肩を並べるようにリリーさんを崇拝し、先ほど上げた小説たちと同様にこの『東京タワー』に対してもバイブルじみた思い入れをしていたんじゃないかって思う。小説って出会う時期がとても大事だと思う。僕はこの先どれほど良い小説に出会えたとしても、その小説が、青春時代という素敵な時期に出会いこの上なく影響を受けることとなった殿堂入りレベルの名作を越えることは、もしかしたらもう無いのかもしれない。そんなことを『東京タワー』を読み終わって漠然と思ったのだ。だって、この本凄い良かったんだ。今年度ナンバーワンの名作なんだ。会う友人みんなにオススメしてるほどだ。みんなにも読んでほしいって思う。今の君にとって人生のバイブルになりうる名作かもしれない。出会って損なしの名作なんだ。もう一度言おう。コレは今年度ナンバーワンだ!オンリーワンとか生温いことは言わない。ブッチギリのナンバーワンだ!村上春樹?そんな奴は忘れちまえ!これからはリリーさんの時代だ!‥‥なんちって。

高橋歩の2冊は好きな女の子が「この人の本マジいいよ。あたし大好きなんだ」って言うもんだから、情けないことにデレデレと、じゃあ僕も読んでみようかな〜ってモロに影響されて、ついつい読んじゃいました。好きな女の子が好きだと言う男性作家にはなんとなくジェラシーを感じる。しかも、この高橋歩って人は旅を素材にキザでほんとカッコイイこと書いてるもんだから、なおさら嫉妬の混じった敗北感。何が嫌って、この高橋歩って人の生き様含めて、そのアツイ言葉にちょっと憧れつつある自分がイヤ。ああ、いい本過ぎてショック。そりゃあの子も夢中になるわけだ。ってなわけで、意に反してではあるが、あいにくオススメなんだな、こんちくしょう!